01 地球と生命

事実と仮説と物語を、どう読み分けるのか

遠い過去をたどる記事には、さまざまな言い方が出てきます。

「確認されています」

「有力だと考えられています」

「いくつかの仮説があります」

「まだわかっていません」

似ているように見えますが、同じ意味ではありません。

残された証拠から比較的確かに言えることもあれば、その証拠を説明するために提案されている考えもあります。

複数の説明が残っていることも、答えそのものが見つかっていないこともあります。

さらにInsideでは、遠い時代を少し身近に感じられるように、証拠を土台にした想像を用いることがあります。

これらを同じ確かさの話として読まないために、Insideでは4つの表示を使います。

  • EVIDENCE
  • HYPOTHESIS
  • OPEN QUESTION
  • INSIDE STORY

この記事では、それぞれが何を表しているのかを見ていきます。

科学は、確かめながら進んでいく

科学について「正しいことを確定するもの」という印象を持つことがあります。

ただ、実際の研究は「正しい」「間違っている」の二つだけで進むものではありません。

観察や測定から得られた証拠があります。

その証拠を説明する考えがあります。

まだ十分な証拠がなく、複数の説明が残っていることもあります。

科学的な知識には不確かさが含まれ、新しい証拠によって見直されることもあります。これは科学が頼りないからではなく、確かめ直せる形で知識を積み重ねているからです。[1][2]

Insideでは「事実」という言葉を、絶対に変わらない答えという意味では使いません。

現時点の証拠から、比較的確かに言えることとして扱います。

EVIDENCE|現在、比較的確かに言えること

EVIDENCEは、岩石、化石、遺伝子、観測、実験、史料などから、現在比較的確かに言えることです。

たとえば、ある地層から化石が見つかったこと。

古代の骨から特定の遺伝情報が確認されたこと。

天体から届いた光を観測し、そこに含まれる元素の特徴が測定されたこと。

これらは、実際に得られた証拠です。

ただし、証拠があれば、それだけで一つの結論が自動的に決まるわけではありません。

同じ化石や遺跡を見ても、年代の測り方、周囲の状況、別の資料との関係によって、解釈が変わることがあります。

科学では、観測や測定によって得られたデータを証拠として扱い、その証拠が何を示しているのかを分析します。証拠を得ることは必要ですが、それだけで研究が完了するわけではありません。[3]

InsideのEVIDENCEでは、次のことを明確にします。

  • 何が見つかったのか
  • 何が測定されたのか
  • どこまで確認されているのか
  • その記述を支える資料は何か

断定できる範囲を超えて話を広げません。

HYPOTHESIS|証拠を説明するための考え

HYPOTHESISは、残された証拠を説明するために提案されている仮説やモデルです。

仮説は、根拠のない思いつきではありません。

観察されたことや、すでに得られている知識をもとに組み立てられ、証拠と照らし合わせながら検討される説明です。

NASAは、科学的な仮説を、観察や実験によって確かめられる形の説明として紹介しています。仮説を立て、観察し、データを分析し、結論を検討する流れは、一度で終わるものではなく、何度も繰り返されます。[4]

一つの証拠から複数の仮説や解釈が生まれることを表したコンセプトアート

ある仮説が、現在もっとも多くの証拠を説明できることもあります。

一方で、細かな部分については別の仮説が残っていることもあります。

Insideでは、一つの仮説だけを紹介して「これが答えです」とは書きません。

有力な考えである場合は、そう考えられている理由を示します。

複数の仮説がある場合は、主な違いと、それぞれが説明しようとしている証拠を伝えます。

OPEN QUESTION|まだ答えのないこと

OPEN QUESTIONは、現時点では答えが決まっていない問いです。

証拠が少ない。

同じ証拠から異なる解釈ができる。

新しい発見によって、これまでの説明が見直されている。

必要な資料が、まだ見つかっていない。

理由はさまざまです。

「まだわかっていない」と書くことは、何も知られていないという意味ではありません。

問いの周囲には、すでに確認されていることがあります。

そのうえで、最後の部分がわかっていないこともあります。

たとえば、ある生物が存在した年代はわかっていても、なぜ姿を消したのかは一つに決められないことがあります。

何がわかり、どこから先がわからないのか。

その境目を示すのがOPEN QUESTIONです。

答えを急いで埋めず、問いを問いのまま残します。

INSIDE STORY|証拠を土台に、想像する

遠い時代には、映像も文章も残っていません。

化石や道具が見つかっても、その場にいた生き物が何を見て、どのように動いたのかまで、すべてを知ることはできません。

それでも、当時の環境や生き物の姿を思い浮かべることで、遠い歴史が少し身近になることがあります。

Inside Storyは、そのための想像です。

ただし、想像した場面を事実のようには書きません。

Inside Storyに入る前には、

ここからは、証拠を土台にした想像です。

研究によってわかっている環境や身体の特徴は土台にします。

ただ、その人が何を考えていたのか。

どのような言葉を話したのか。

何を恐れ、何を願っていたのか。

証拠から確かめられない部分は、想像であることを隠しません。

一つの場面を、4つに分けてみる

古い遺跡から、灰、焼けた骨、石器が見つかった場面を考えてみます。

古い火の痕跡を、証拠、仮説、未解決の問い、想像という異なる視点から見ることを表したコンセプトアート

EVIDENCE

遺跡の特定の場所から、灰、焼けた骨、石器が見つかった。

これは、発見されたものについての記述です。

HYPOTHESIS

その場所で、人類が繰り返し火を使っていた可能性がある。

これは、見つかった証拠を説明する考えです。

自然に起きた火災など、別の説明が考えられる場合は、その可能性も検討されます。

OPEN QUESTION

火の周りで何をしていたのか。

どのように役割を分けていたのか。

言葉や物語を共有していたのか。

こうしたことは、証拠だけでは答えきれません。

INSIDE STORY

暗くなった場所で、火の近くにいくつかの影が集まっている。

誰かが石器を手にし、別の誰かが炎の向こうを見ている。

このような場面は想像できます。

ただし、それは当時の出来事を再現したものではありません。

同じ題材でも、4つはそれぞれ別の役割を持っています。

表示と出典は、役割が違う

EVIDENCEやHYPOTHESISの表示だけでは、根拠を示したことにはなりません。

表示は、その文章がどのような確かさで書かれているのかを伝えるものです。

出典は、その記述がどの資料に基づいているのかを伝えるものです。

Insideでは、本文中に[1][2]のような番号を置き、記事の最後に文献名とリンクをまとめます。

EVIDENCEには、その証拠を確認できる資料を付けます。

HYPOTHESISには、その仮説を提案または検討している資料を付けます。

OPEN QUESTIONには、何が未解決なのかを確認できる資料を付けます。

Inside Storyは、証拠そのものとして引用しません。想像の土台にした資料がある場合は、その直前の解説部分で示します。

4つの表示は、それぞれ役割が違う

EVIDENCEがあり、HYPOTHESISによって証拠の意味を考えます。

OPEN QUESTIONが、まだ見えていない部分を示します。

INSIDE STORYは、遠い時代と現在の読者をつなぎます。

どれか一つだけで、Insideの旅を進めることはできません。

大切なのは、それぞれを混ぜないことです。

  • わかっていることを、必要以上に曖昧にしない
  • 仮説を、確定した事実として書かない
  • わからないことを、想像で埋めない
  • 想像を使うときは、想像であると明記する

Insideは、この区別を守りながら、人間へ続く長い歴史をたどります。

次の旅へ

二つの序章を通して、旅の始点と読み方を確認しました。

ここから、本編へ入ります。

最初にたどるのは、地球が生まれるよりも前の宇宙です。

私たちの身体をつくる材料は、どこで生まれたのでしょうか。

次の記事は、

宇宙に、生命の材料が生まれる

出典・参考文献

  1. National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine Reproducibility and Replicability in Science (閲覧日:2026年7月15日)
  2. National Research Council Scientific Research in Education – Guiding Principles for Scientific Inquiry (閲覧日:2026年7月15日)
  3. National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine Understanding and Addressing Misinformation About Science – Defining Misinformation About Science (閲覧日:2026年7月15日)
  4. NASA Science The Scientific Method and Climate Change: How Scientists Know (閲覧日:2026年7月15日)