落ち込み

うつの方との関わり方・接し方について

温かい生成りの壁と木の床の静かなリビングに、少し離れて置かれた二脚の椅子があり、片方の椅子に淡いグリーンのブランケットがそっと掛けられている写真風の画像。
温かい生成りの壁と木の床の静かなリビングに、少し離れて置かれた二脚の椅子があり、片方の椅子に淡いグリーンのブランケットがそっと掛けられている写真風の画像。

とても多い相談のひとつに、
「うつの方と、どう接していいかわからない」
というものがあります。

「テレビや知人の話などで、うつを患っている人の話は聞いたことはあるが、まさか自分の近しい人がうつを患うなんて思いもしなかった」

そうお話しされる方は、とても多いです。

そのような方々の中には、
「自分自身、落ち込むことはあるけど、そんなに思い悩むことがないので理解できない」
という方もいらっしゃいます。

確かに、誰もが思い悩まずに人生を謳歌できたら、とても素晴らしいと思います。
でも、現実はそうではありません。

そして、大切な人が苦しんでいる姿を前にすると、どうしたらいいのかわからなくなるのも当然なんです。

だからこそ、まずは「うつ」を少しでも理解し、そのうえでどう関わっていけばいいのかを考えていく必要があります。

「うつ」を理解する

まず最初に、「うつ」とはなにかを理解する必要があります。

しかし、「うつ」といっても様々で、もちろん原因や症状も人それぞれですし、現代医学をもってしても、根本的なメカニズムは完全には解明されていません。

ですので、その辺りはお医者様にお任せするとして、ここでは
「どのようにつらいのか」
「どう関わっていったらいいのか」
を、私の経験を踏まえてお話しいたします。

すべてわかってる

うつで苦しんでいる方を前にした時、あなたはこう思うかも知れません。

「そんなこと考えなきゃいいんじゃん」とか
「考えすぎだってば」とか
「行けばなんとかなるって」とか
「誰もそんな風に思ってないって」とか
「このままじゃ大変だよ?」とか
「この先どうすんの?」とか
「ちょっとやる気出せばいいんだよ」とかとかとか。

でも、私の経験から言わせていただくと、

「んな事わかってるよ!」

となります。

本当に、わかっているんです。
わかっているのに、どうにもならない。
頭では理解していても、こころも身体もまったくついてこない。

そこが、とてもつらいところなんです。

周りから見れば「わかっているならできるはず」と思えることでも、うつの渦中にいる時は、それができません。

ですので、まずは
「わかっていないのではなく、わかっていても動けない状態なんだ」
ということを理解してください。

否定的な考えしか浮かばない

とにかく否定的に考える天才のような状態ですので、アドバイスなどはいけません。

普通の状態であれば、
「こうしてみたら?」
「こう考えたら少し楽なんじゃない?」
という言葉が助けになることもあります。

ですが、うつの時は、その言葉すら否定的に受け取ってしまいやすくなります。

「頑張って」
「あなたならできるよ」
などの言葉も、

「頑張ってもどうにもならない」
「できるわけがない」

となってしまい、さらには
「頑張ることもできないのか」
という思考に苛まれ、負のスパイラルへと突入してしまいます。

励ましのつもりの言葉が、そのまま刃のように刺さってしまうこともあるんです。

トイレに行くのも大変

うつの状態になると、服装や食事、お風呂などは、どうでもよくなります。
それどころではなくなってしまうんです。

そして、トイレに行くことすら大変な時があります。

大変だからといって、漏らしてしまうわけにもいかないので、私の場合は這って行くこともありました。

これは大げさでもなんでもなく、それほどまでにエネルギーが枯れてしまうことがある、ということです。

普段なら何でもないことが、とてつもなく大きなことになります。

起き上がる。
着替える。
顔を洗う。
食べる。
返事をする。
トイレに行く。

こうしたひとつひとつが、とても重くなることがあります。

ですので、
「それくらいできるでしょ」
と思わないでください。

その「それくらい」が、本当にできないほどつらい時があるんです。

やたら泣けてくる

どうしてこうなってしまったのか。
これからどうなってしまうのか。
こんな自分をみんなはどう思っているんだろうか。

こんなことが頭の中で渦を巻いていて、ひたすら自己嫌悪に陥ります。

そして、やたら泣けてきます。

大声をあげて泣くことができれば、少しはスッキリするかも知れませんが、それもできません。

ただただ、苦しい。
ただただ、つらい。
ただただ、消えてしまいたいような感覚に包まれることもあります。

それなのに、周りにはその苦しさがなかなか伝わらない。
そこにもまた孤独があります。

接し方・関わり方

ここからは、実際にどう接し、どう関わっていけばいいのかについてお話しします。

「信用」ではなく「信頼」する

「信用」とは、実績などを評価し判断する行為ですが、
「信頼」とは、その人そのものに対する判断です。

うつの方と関わる時には、過去の出来事や行動などで評価するのではなく、現在のその方を信頼することが大切です。

以前はできていたことが、できなくなっているかも知れません。
約束を守れないこともあるかも知れません。
返事ができないこともあるかも知れません。

でも、それは「怠け」でも「甘え」でもなく、いま苦しんでいる状態の中で起きていることです。

だからこそ、
「前はちゃんとしていたのに」
「どうして今はできないの?」
ではなく、

「いまはつらいんだよね」
「いまのあなたをそのまま受け止めるよ」

という姿勢でいてください。

必ず快方へ向かうことを強く信じ、現在のその方を信頼します。

励まさず寄り添う

つらい状態を見てしまうと、どうしても励ましてあげたくなります。
励ますことで少しでも元気になれば、という善意の言葉がけであっても、時に大きな負担になります。

まずは、しっかりと寄り添ってください。
無理して声をかけなくても構いません。

うつの方はとても繊細で敏感です。
無理をして声をかけようとすると、敏感に感じ取り、
「無理をさせている」
と自分を責めてしまいます。

言葉をかけるよりも、しっかりと寄り添い、安心できる雰囲気をこころがけてください。

そばにいる。
急かさない。
結論を急がない。
「元気になってほしい」という気持ちを押しつけない。

こうしたことが、とても大切です。

何か特別なことを言わなくてもいいんです。
ただ、安心できる存在でいること。
それだけでも大きな支えになります。

共感する

話し始めた時は、無理にあれこれ聴こうとせずに、その方のペースに任せます。

何かをしながらではなく、しっかりと耳を傾け、
「そうだね、つらいね」
「大変だったね」
と共感してください。

共感とは、感情を共有することです。

相手の言葉を評価したり、正すことではありません。
「そう感じるんだね」
「それは苦しいよね」
と、その方の感じていることを、そのまま受け止めていくことです。

簡単なことではありませんが、つらく苦しい感情を共感することができたら、快方へ向かう足掛かりになるかも知れません。

共感は、それほど大切なことです。

逆に、
「でもさ」
「そんな風に考えなくても」
「もっとこうしたらいいのに」
と、すぐに方向転換させようとすると、こころを閉ざしてしまうことがあります。

まずは理解しようとすること。
答えを出す前に、受け止めること。

そこを大切にしてください。

こころの風邪ではない

よく「うつはこころの風邪」なんて言葉を耳にします。

うつに対する偏見や恐怖心をなくすために使っているんでしょうが、私はこころの複雑骨折だと思っています。

「うつ」とは、受け止め切れないほどのストレスの影響により、こころがバラバラになってしまっている状態だと思っています。

客観的・複合的・総合的・論理的・倫理的・社会的・生物的・個人的・本能的・感情的・情緒的・などなどの思考それぞれが、繋がったり組み合わさったりしながら「こころ」を形成し維持しているんだとすれば、「うつ」はそれをバラバラにしてしまいます。

バラバラに複雑骨折してしまった「こころ」にリンクできるのは「否定的」な感情だけになってしまい、修復を拒みます。

この状態でまず必要なのは、治療、そして休息です。

間違っても、叱咤激励はしないでください。

その方は風邪で苦しんでいるのではなく、複雑骨折で苦しんでいるんですから。

「少し休めば治るでしょ」
「気分転換したらよくなるよ」
と軽く扱わないことも大切です。

本人がいちばん苦しんでいます。
周りが軽く見てしまうと、その苦しさはさらに深くなってしまいます。

存在していることが素晴らしい

あなたの大切な方が、うつに苦しんでいたら、あなた自身も不安になって苦しいですよね。

しかし、「不安」とは、生存していく上で必要不可欠な感情のひとつです。
それを感じられることは、生物としての機能が正常だということです。

ですので、漠然と「不安」を恐れるのではなく、大切な方とあなたが、いまここに存在していることを実感してください。

大きな地球の上に確かに存在している。
これほど素晴らしいことは他にありません。

うつの方を支える側も、無力感を覚えたり、つらくなったりすることがあります。

「何もしてあげられない」
「どうしたらいいかわからない」
「このままで大丈夫なんだろうか」

そんな風に思うこともあるでしょう。

でも、すぐに何かを変えられなくても、
いまここにいること。
見捨てないこと。
存在を否定しないこと。
それだけでも、とても大きな意味があります。

そして、支える側であるあなた自身も、ひとりで抱え込みすぎないでください。

大切な方を思うからこそ、あなた自身も疲れてしまうことがあります。
そんな時は、あなたもまた休んでいいんです。
相談していいんです。

最後に

うつの方との関わり方で大切なのは、
「なんとかしてあげよう」と力を入れすぎることではありません。

わかろうとすること。
否定しないこと。
励ましすぎないこと。
寄り添うこと。
共感すること。
そして、治療と休息の大切さを理解すること。

それらを大切にしながら関わっていくことが、とても大事なんです。

すぐに何かが変わるわけではないかも知れません。
でも、安心できる関わりは、少しずつその方の支えになっていきます。

大切なのは、「正しいことを完璧にする」ことではなく、
その方を傷つけずに、見捨てずに、そばにいようとすること。

それだけでも、十分に意味があります。