心身の波・診断との付き合い方

うつでつらい人を支えるときに大切にしたいこと

うつでつらい人を支えるとき、完璧な言葉を探す必要はありません。話の聴き方、具体的な手助け、専門家へのつなぎ方、支える側の休息をまとめました。

温かい生成りの壁と木の床の静かなリビングに、少し離れて置かれた二脚の椅子があり、片方の椅子に淡いグリーンのブランケットがそっと掛けられている写真風の画像。

大切な人が、うつでつらそうにしている。

そんなとき、そばにいる人も戸惑います。

励ました方がいいのか。

そっとしておいた方がいいのか。

医療機関をすすめるべきなのか。

何かしてあげたいと思うほど、正しい言葉を探してしまうことがあります。

でも、支えるうえで大切なのは、相手をすぐに元気にすることではありません。

今のつらさを軽く扱わず、本人が望む支えを確かめ、必要な支援へつなぐことです。

うつは、気分だけの問題ではない

うつの状態では、気分の落ち込みだけでなく、眠り、食欲、集中力、判断する力、体の重さなどにも変化が出ることがあります。

本人も、起きた方がいい、食べた方がいい、連絡を返した方がいいとわかっているかもしれません。

それでも、心と体がついてこないことがあります。

外からは寝ているだけ、何もしていないように見えても、本人の中では日常の小さな動作にも大きな力が必要になっていることがあります。

ですので、

「わかっているなら、やればいい」

と急かす前に、今は動くこと自体が難しい状態なのかもしれないと考えます。

うつかどうかを家族だけで判断する必要はありません。変化が続いている場合は、医療機関や相談窓口へつながることが大切です。

励ます前に、今のつらさを聴く

相手を大切に思うほど、

「頑張って」

「元気を出して」

「考えすぎないで」

と言いたくなることがあります。

ただ、頑張りたいのに頑張れないときには、励ましが「もっとできなければ」という負担になる場合があります。

カウンセリングで大切にされる「傾聴」は、すぐに評価や助言をせず、相手の言葉を聴く関わりです。

ここでの目的は、問題をその場で解決することではありません。

「つらいんだね」

「話してくれてありがとう」

「今は答えを出さなくてもいいよ」

と、本人が感じていることを否定せずに受けとめます。

話したくない様子なら、無理に聞き出しません。話せるときに、話せる範囲で構いません。

手助けは、小さく具体的に伝える

つらいときは、

「何かあったら言ってね」

と言われても、何を頼めばよいのか考えられないことがあります。

そのため、手伝えることを小さく具体的に伝える方が、受け取りやすい場合があります。

  • 「買い物へ行くけれど、飲み物を買ってこようか」
  • 「今日は返事をしなくて大丈夫だよ」
  • 「受診先を調べるところだけ、一緒にやろうか」
  • 「話さなくても、同じ部屋にいるだけでいいよ」

相手の代わりにすべてを決めるのではなく、本人の希望を確かめながら、負担をひとつ減らします。

家族や友人だけで支えようとしない

うつでつらい状態が続いているときは、医療機関や相談窓口、専門家の力を借りてください。

本人が受診をためらっているなら、強く押し切るより、選択肢として伝えます。

「一人で抱えるには重いかもしれないから、相談先だけ一緒に見てみない?」

「予約するかは、情報を見てから考えてもいいよ」

「必要なら付き添うよ」

専門家へつなぐことは、見放すことではありません。

家族や友人だけでは担えない部分を、適切な相手へ渡すことです。

安全が心配なときは、すぐに助けを求める

命や安全に関わる心配があるときは、様子を見るだけにしないでください。

主治医がいる場合は主治医や受診先へ、差し迫った危険を感じる場合は救急や地域の緊急相談先へ連絡します。

支える側だけで判断しきれないときも、専門家へ相談して構いません。

「大げさかもしれない」と迷う場面ほど、ひとりで抱えず、外部の助けを使います。

支える側にも、支えが必要

大切な人を支えている側も、眠れなくなったり、自分の生活が崩れたりすることがあります。

相手を心配するあまり、できないことまで背負おうとしてしまうかもしれません。

でも、相手を大切にすることと、自分を消してしまうことは同じではありません。

自分の食事や睡眠を守る。

支援について誰かに相談する。

できることと、できないことを分ける。

少し離れて休む時間を作る。

支える側が助けを借りることも、関係を長く支えるために必要です。

うつ症状かもしれないと感じたときに、ひとりで抱え込まないためにでは、本人に起こりやすい変化と、相談につながる目安をまとめています。

悩みをひとりで抱え込まないためにでは、相談相手や相談方法を選ぶ考え方を紹介しています。

『カール・ロジャーズ入門』は、相手を変えようとする前に、その人の言葉を受けとめることについて考える本です。

完璧な言葉がなくても、できることはある

支える側が、相手の苦しさをすべて取り除くことはできません。

それでも、責めずに話を聴く。

できることを具体的に差し出す。

必要な支援へつながる手助けをする。

そして、自分自身も抱え込みすぎない。

正しい言葉を探し続けなくても、その関わりには意味があります。

参考資料

この記事は、診断や治療を目的としたものではありません。