不安を少し軽くするために、まず試したい3つのこと
不安が強いとき、無理に消そうとすると、かえって苦しくなることがあります。呼吸を整えること、頭の中を書き出すこと、不安を感じる自分を責めすぎないこと。今できる小さな整え方をまとめました。
不安の原因は、人によってさまざまです。
ですので、役立つ対処法も同じとは限りません。
カウンセリングや医療機関への相談が必要な場合もあります。
でも、まずは自分で、このザワザワした感じを少し軽くしたい。
そんなときに試していただきたい方法を、3つご紹介します。
不安を完全になくすための方法ではありません。
不安だけに意識を奪われている状態から少し離れ、今できることを選びやすくするための方法です。
1.呼吸と体の感覚に意識を戻す
不安なときは、頭の中だけが苦しいのではありません。
体に力が入り、呼吸が浅くなったり、速くなったりすることがあります。
「落ち着かなきゃ」
と考えても、体が緊張したままでは、なかなか落ち着けないこともあります。
ここでは、マインドフルネスの考え方を取り入れます。
目的は、不安を呼吸で消すことではありません。
不安な考えだけに向いていた意識を、今ここにある呼吸や体の感覚へ戻すためです。
呼吸しやすい姿勢をとる
椅子に座っているなら、無理のない範囲で背中を起こします。
背もたれに楽にもたれても構いません。
横になれるなら、仰向けなど、自分が楽だと感じる姿勢を選びます。
立派な姿勢を作る必要はありません。
今より少し呼吸しやすい姿勢で十分です。
吐く息と体の動きを感じる
胸やお腹へ手をそっと置き、無理のない範囲で息を吐いてみます。
吐いたら、鼻から自然に息を吸います。
そして、またゆっくり吐きます。
息を吸ったときに体が少し動き、吐いたときに戻る。
その動きを、手のひらで感じてみます。
秒数や回数を、きっちり決める必要はありません。
深く呼吸すると苦しくなる場合は、無理に変えず、今の呼吸を感じるだけでも構いません。
上手に呼吸することではなく、
「今、息を吸っている」
「今、息を吐いている」
と、体で起きていることへ意識を戻すことが大切です。
2.頭の中にあることを書き出す
不安が強いときは、過去に起きたこと、今の問題、まだ起きていない未来への心配が、頭の中で混ざっていることがあります。
全部がひとつの大きなかたまりになると、自分が何に反応しているのかさえ、わからなくなることがあります。
そこで、認知行動療法や問題解決アプローチで使われる考え方を参考に、頭の中にあるものを紙やメモへ出して整理します。
目的は、無理に前向きな答えを出すことではありません。
実際に起きていることと、頭の中で予測していることを分け、今扱える部分を探すためです。
まとまらないまま書いていい
紙やメモへ、頭に浮かんでくることを書いていきます。
順番や文章の形は気にしなくて構いません。
「怖い」
「どうしよう」
「あのことが気になる」
それだけでもいいんです。
書かれた言葉を見ることで、自分が考えていることを、頭の中にあるときよりも少し離れたところから見やすくなります。
事実・予測・選べることに分ける
書き出した内容を、まず次の3つに分けます。
- 過去に起きたこと
- 今、実際に起きていること
- これから起きるかもしれないと予測していること
次に、今の自分が何かできることと、自分だけでは変えられないことを分けます。
過去の出来事や、相手がどう思うかは、自分では変えられません。
でも、変えられないからといって、簡単に気にならなくなるわけではありません。
気になるものは気になります。
ですので、無理に捨てようとせず、
「これは、今の自分には変えられないこと」
「これは、今日は答えを出せないこと」
と分けて、いったん保留にしておきます。
ここで大切なのは、
「気になること」と
「自分でどうにか出来ること」は
別だということです。
その違いが見えてくると、今できることも探しやすくなります。
不安の奥にあるものを見る
次に、
「自分は、なぜこれを不安に感じているのだろう」
と考えてみます。
- 失敗するのが怖い
- 傷つくのが怖い
- 大切なものを失いたくない
- 誰かに嫌われたくない
- 自分ではどうにもできなくなるのが怖い
不安の奥には、自分が避けたいことや、守りたいものが隠れている場合があります。
ここで、自分を責める必要はありません。
不安なものは不安です。
怖いものは怖いんです。
まずは、何を怖がり、何を守ろうとしているのかを見る。
そこからでいいんです。
3.不安が出てくる仕組みを知る
対処法を試すだけでなく、なぜ人間には不安が出てくるのかを知ることも大切です。
理由がわからないままでは、
「自分は弱いから不安になる」
「変われない自分はダメだ」
と、自分の性格や努力不足だけの問題にしてしまうことがあります。
でも、不安が出るのには、人間としての理由があります。
人は慣れた状態を選びやすい
私たちの体には、体温などをある程度安定した状態に保とうとする「恒常性」があります。
一方、心理学では、現在の状態を変える選択よりも、そのまま保つ選択を好みやすい傾向を「現状維持バイアス」と呼びます。
体の恒常性と、現状維持バイアスが同じ仕組みという意味ではありません。
ただ、人は必ずしも、より良くなりそうな新しい選択をするとは限らず、慣れた方を選びやすいということです。
今までと違うことを始める。
人間関係を変える。
長く続けてきた習慣を見直す。
そのようなときは、変わった先がまだわからないため、不安や抵抗が出ることがあります。
今の状態が苦しくても、慣れている方は、少なくともこれまで何とか過ごしてこられた状態です。
変わりたいのに不安になる。
やろうと決めたのに動けなくなる。
元の状態へ戻りたくなる。
それは、意志の弱さだけで起きているとは限りません。
慣れたものを手放すことへ、警戒が起きているのかもしれません。
脳や遺伝子は、幸せよりも生存を優先する
少し乱暴な言い方をすると、脳や遺伝子は、私たちの幸せにはあまり興味がありません。
進化の観点では、生き延び、命を次の世代へつなぐことに役立つ性質が残りやすくなります。
もちろん、脳や遺伝子が意思を持って考えているわけではありません。
長い進化の中で、危険に気づき、慎重に行動できた個体の方が、生き延びやすかったということです。
新しいことへ挑戦すれば、今より幸せになれるかもしれません。
でも、失敗したり、傷ついたり、居場所を失ったりする可能性もあります。
その先がわからないからこそ、不安や警戒が起きることがあります。
脳にとっては、
「いま生きているんだから、変わらない方が安全なんじゃない?」
ということなんです。
もちろん、不安の理由はこれだけではありません。
過去の経験、疲れ、体調、環境、人間関係など、さまざまなものが関係します。
変化や不確かなものを警戒する仕組みも、そのひとつです。
不安と戦いすぎない
不安が出てくると、
「こんな不安は消してしまおう」
「考えないようにしよう」
と、戦いを挑みたくなります。
でも、不安を消そうとするほど、
「まだ残っていないか」
と確認し、不安に意識が向き続けることがあります。
ここでは、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の「アクセプタンス」という考え方を取り入れます。
アクセプタンスとは、不安を好きになることでも、不安の言うとおりに行動することでもありません。
不安があることを認めたうえで、そのあとにすることを選ぶための考え方です。
「そかそか。不安なんだな」
と、自分の中で起きている反応を見てみます。
不安を感じている自分まで、否定する必要はありません。
不安も自分の一部として、そっと横に置いておきます。
そうすると、
「今すぐ結論を出さなくてもいい」
「まずは、できることをひとつ考えよう」
と、次の行動を選びやすくなります。
不安がある日も、自分を見失わないために
今回紹介したのは、次の3つです。
- 呼吸や体の感覚へ意識を戻す
- 頭の中にあることを書き出して整理する
- 不安が出てくる人間の仕組みを知る
不安が出るのには、ちゃんと理由があります。
不安を感じることだけで、自分は弱い、努力が足りないと決めつける必要はありません。
不安を消してから動こうとするのではなく、呼吸や体へ意識を戻し、今できることを見つけます。
不安はある。
でも、すべてを不安に決めさせなくてもいいんです。
参考資料
- NHS Every Mind Matters「Tackling your worries」
- National Center for Complementary and Integrative Health「Meditation and Mindfulness: Effectiveness and Safety」
- Samuelson, W. & Zeckhauser, R. “Status quo bias in decision making”
- Association for Contextual Behavioral Science「Acceptance & Commitment Therapy」
この記事は、診断や治療を目的としたものではありません。
不安が強く続いている場合や、眠れない、食事がとれない、日常生活に大きな支障が出ている場合は、医療機関や相談窓口、信頼できる専門家へご相談ください。