不安・ざわざわ

過去の経験からくる不安にどう対応するか

温かい生成りの壁を背景にした静かな棚の上に、ふたが少し開いた古い木箱が置かれ、中に手紙のような紙が見え、そばに淡いグリーンの布がそっと掛けられている写真風の画像。

過去に傷ついた経験や、つらかった出来事があると、似たような場面に出会ったときに強い不安が出てくることがあります。

たとえば、以前人間関係で傷ついた経験があると、新しい人間関係でも、

「また同じことが起きるかもしれない」

と感じることがあります。

これは、心が弱いからではありません。

人間は、過去の経験から危険を学び、似た場面に出会うと早めに身を守ろうとします。

今の出来事と過去の記憶が重なり、心や体が先に反応しているのかもしれません。

この記事では、過去を無理に忘れるのではなく、今と過去を分けながら、今の自分にできることを考えていきます。

今起きていることと、過去の出来事を分けてみる

過去の経験からくる不安に対応するときは、まず「今」と「過去」を分けて考えてみます。

不安が強いときは、昔の出来事が、まるで今も続いているように感じられることがあります。

以前誰かに否定された経験があると、相手に少しそっけない反応をされただけで、

「また嫌われたのでは」

と感じてしまうこともあります。

そんなときは、今起きていることを確認してみます。

「相手は、実際に何を言った?」

「今、何が起きている?」

「過去と同じことが起きているのか、似ているように感じているだけなのか」

「今の自分には、どんな選択肢がある?」

こうして確認すると、過去の記憶と、今目の前で起きていることを分けて見やすくなります。

ただし、今の相手から傷つけられていたり、実際に危険を感じたりしている場合は、過去の反応だと片づけないでください。

その場を離れる、誰かに相談するなど、自分の安全を優先します。

不安の理由を見てみる

不安が出てきたとき、

「こんなことで不安になるなんて」

と、自分まで責めてしまうことがあります。

でも、その反応には、そうなるだけの理由があるのかもしれません。

過去に我慢しすぎたこと。

傷ついたのに、平気なふりをしてきたこと。

もう二度と同じ思いをしたくないこと。

大切なものを失いたくないこと。

そうした経験や思いが、今の不安につながっていることがあります。

不安は、同じ痛みを避けるために鳴っているアラームなのかもしれません。

そんなときは、

「この不安は、何から自分を守ろうとしているんだろう」

と考えてみます。

ただの弱さとして片づけず、まずは理由を見てみる。

そうすると、自分の反応を少し理解しやすくなります。

今の自分を守る行動をひとつ選ぶ

過去の経験からくる不安は、頭の中だけで何とかしようとしても難しいことがあります。

考え続けるうちに、昔の記憶や、これから起きるかもしれないことまで広がってしまうからです。

そんなときは、マインドフルネスの考え方を取り入れた「グラウンディング」という方法を使ってみます。

マインドフルネスとは、過去や未来の考えに引っ張られているときに、今この瞬間の体の感覚や、周りで起きていることへ意識を向ける考え方です。

グラウンディングでは、足の裏の感覚や、手に触れているものの温度、今見えているものなどを確かめながら、意識を「今ここ」へ戻していきます。

過去を忘れたり、不安を無理に消したりするためではありません。

過去の記憶に引っ張られたまま考えるのではなく、今の自分が置かれている状況を確かめるために行います。

たとえば、次のような方法があります。

  • 足の裏が床についている感覚を確かめる
  • 無理のない範囲で、ゆっくり息を吐く
  • 温かい飲み物の温度や味を感じる
  • 今見えているものを、ひとつずつ言葉にする
  • 周りから聞こえてくる音に意識を向ける
  • 手に触れているものの硬さや感触を確かめる

全部やる必要はありません。

できそうなものを、ひとつだけ選びます。

温かい。

足が床についている。

時計の音が聞こえる。

今、自分はここにいる。

そんなふうに、今感じていることをひとつずつ確かめていきます。

過去の記憶そのものが消えるわけではありません。

ただ、過去の出来事と、今目の前で起きていることを分けて考えるための手がかりになります。

そのうえで、今の場所は安全なのか、その場を離れた方がいいのか、誰かに相談した方がいいのかを考えます。

過去をなかったことにしなくていい

過去の経験からくる不安は、

「もう忘れなければいけない」

と思うほど、苦しくなることがあります。

でも、無理に忘れる必要はありません。

つらかったことを、なかったことにしなくていいんです。

あのときは傷ついた。

あのときは怖かった。

あのときは苦しかった。

それは、実際に自分が経験したことです。

ただ、今の自分は、あの頃とまったく同じではありません。

その場を離れる。

嫌なことを断る。

誰かに助けを求める。

すぐに答えを出さず、時間を置く。

今の自分には、選べることが残っているかもしれません。

過去を消すのではなく、過去に傷ついた自分も連れたまま、今の安全を選び直していく。

まずは、今起きていることを確かめるところからでいいんです。

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過去の記憶が何度もよみがえり、強いつらさが続いている場合や、生活に大きな支障が出ている場合は、ひとりで抱え込まず、医療機関や専門家へ相談してください。