診断名がつかなくても、しんどさはある
診断名がつかなくても、しんどさはあります。できているように見えることと、楽にできていることは違います。自分を責める前に、負担になりやすい場面を少しづつ見ていくための記事です。
まわりと同じようにやっているつもりなのに、なぜか疲れやすい。
音や光、人混み、予定変更、雑談、同時進行。
人によっては何でもないことが、自分には大きな負担になることがあります。
けれど、検査を受けても診断名がつかなかったり、相談しても「様子を見ましょう」で終わったりすると、
「やっぱり自分の努力不足なのかな」
と思ってしまうことがあるかもしれません。
でも、診断名がつかないことは、困っていないという意味ではありません。
説明しにくいだけで、たしかにしんどさがあることもあります。
この記事は、発達障害の診断や自己判断を目的としたものではありません。診断や治療については、医療機関や専門機関にご相談ください。
診断名がつかないと、しんどさまで見えにくくなる
診断名がつかなかった。
だから大丈夫。
そう受け取られてしまうと、本人はさらに苦しくなることがあります。
本当は困っているのに、困っていることを説明する言葉がない。
その状態は、とても孤独です。
発達障害は、脳の働き方の違いによって、物事のとらえ方や行動のパターンに違いがあり、そのために日常生活に支障がある状態と説明されています。
ただし、困りごとの出方は人によって違います。
同じ診断名でも感じ方や困り方は同じではありません。
そして、診断名がつかなかったからといって、日常の負担がなかったことになるわけでもありません。
一般に「発達障害グレーゾーン」と呼ばれることもありますが、これは正式な診断名ではありません。
診断基準には満たないものの、特性のようなものが見られたり、日常の中で困りごとがあったりする状態を指して使われることがあります。
名前がつくかどうか。
それは大切なことです。
でも、名前がつかなかったからといって、あなたのしんどさまで消えるわけではありません。
できているように見えることと、楽にできていることは違う
仕事に行けている。
学校に行けている。
人前では普通に話せている。
約束も守っている。
だから、周りから見ると「問題なくできている人」に見えるかもしれません。
でも、そのあと家でぐったりしてしまう。
休日は回復だけで終わってしまう。
人に会ったあと、何度も会話を思い返して疲れてしまう。
予定をこなすだけで、心も身体もぎりぎりになる。
そういうことがあります。
できているように見えることと、楽にできていることは違います。
外から見える結果だけでは、その人の内側でどれだけ力を使っているかは分かりません。
「普通にできているように見えるから大丈夫」ではなく、
「できているように見せるために、どれくらい消耗しているのか」
も見ていいのだと思います。
困りごとは、性格だけでなく環境との相性でも起こる
音が多い場所。
強い光。
人混み。
急な予定変更。
曖昧な指示。
雑談の多い職場。
複数のことを同時に進める作業。
そうした環境では、負担が大きくなる人がいます。
それは、性格が弱いからとは限りません。
努力が足りないからとも限りません。
自分の感じ方や処理の仕方と、今いる環境が合っていないことで、しんどさが強くなることがあります。
たとえば、静かな場所なら落ち着いて考えられるのに、音の多い場所では頭が働かなくなる。
ひとつずつならできるのに、同時にいくつも求められると混乱する。
文字で説明されれば分かるのに、口頭だけだと抜けてしまう。
そういうことは、本人の怠けだけで説明できるものではありません。
まず見るべきなのは、あなたの欠点だけではなく、あなたと環境との相性かもしれません。
診断名は大切。でも、診断名だけが自分を説明するわけではない
診断名は、大切なものです。
必要な支援につながる助けになることがあります。
自分の困りごとを整理したり、周りに説明したり、医療や福祉、学校や職場の配慮を考えたりする入口になることもあります。
だから、診断名を軽く扱う必要はありません。
一方で、診断名だけが自分を説明するわけでもありません。
診断名がつかなかった。
検査でははっきりしなかった。
でも、音や光で疲れる。
予定変更が苦手。
人とのやりとりで消耗する。
片づけや段取りがうまくいかず、自分を責めてしまう。
そうした困りごとは、診断名の有無とは別に、日常の中に存在していることがあります。
名前をつけることだけが、最初の一歩ではありません。
まずは、自分がどんな場面で負担を感じやすいのかを見ていくこと。
それも、自分を責めすぎないための大切な一歩です。
自分を責める前に、負担になりやすい場面を見てみる
「自分は何が苦手なのか」と決めつける前に、まずは負担が増えやすい場面を見てみます。
たとえば、こんな場面です。
- 人混みに行くと、どっと疲れる
- 音や光、においが強い場所で落ち着かない
- 急な予定変更があると、頭が真っ白になる
- 曖昧な指示を受けると、何から始めればいいか分からなくなる
- 複数の作業を同時に求められると混乱する
- 雑談や暗黙の了解がしんどい
- メールやLINEの返信にとても時間がかかる
- 家事の段取りや片づけでつまずきやすい
- 時間管理がうまくいかず、自分を責めてしまう
- 人前では平気に見せて、帰宅後にぐったりする
この中に当てはまるものがあるからといって、何かの診断がつくという意味ではありません。
ただ、自分がどんな場面で疲れやすいのかを知ることはできます。
「私はだめだ」とまとめて責めるより、
「この場面では負担が増えやすいのかもしれない」
と分けて見ていく。
それだけでも、自分との付き合い方は少し変わります。
できない自分を責める前に、負担が増える条件を見てみる。
そこから、工夫や相談の入口が見つかることがあります。
ひとりで抱えきれないときは、相談先を知っておく
診断名がないから、相談してはいけない。
そんなふうに思わなくても大丈夫です。
発達障害者支援センターは、各都道府県・指定都市に設置されている相談機関です。
発達障害のある方やその家族などに対して、相談支援、発達支援、就労支援、情報提供などを行う場所として案内されています。
相談先によって対応できる内容や範囲は異なりますが、「診断名がついている人だけ」のための場所とは限りません。
たとえば茨城県では、発達障害またはその疑いのある方とその家族、関係機関を対象とした相談先として、地域ごとに以下の発達障害者支援センターが案内されています。
- 茨城県発達障害者支援センター「あい」
- 茨城県発達障害者支援センター「COLORSつくば」
発達障害者支援センターは、診断をする場所ではありません。
けれど、困りごとの整理、情報提供、関係機関との連携などにつながることがあります。
また、状況によっては、市町村の障害福祉相談窓口、医療機関、学校や職場の相談窓口などにつながることも選択肢です。
ただし、利用できる制度や配慮の内容は、状況や機関によって異なります。診断書などが必要になる場合もあるため、具体的な支援については各相談先に確認してください。
相談したからといって、すぐに大きな決断をしなければならないわけではありません。
まずは、どんな相談先があるのかを知っておく。
それだけでも、ひとりで抱え込むしかない状態から、少し距離を取れることがあります。
眠れない日が続く、生活に大きな支障が出ている、気持ちの落ち込みが強いなどの場合は、ひとりで抱え込まず、医療機関や相談窓口につながることも選択肢です。
診断名がつかなくても、しんどさはある
診断名がつかなくても、しんどさはあります。
それは、あなたの感じ方が大げさだという意味ではありません。
説明しにくいだけで、たしかに負担になっていることがあります。
できているように見えることと、楽にできていることは違います。
名前がつかないことと、困っていないことも違います。
まずは、自分を責めすぎないこと。
そして、どんな場面で負担が増えるのかを、少しづつ見ていくこと。
名前をつけることだけが、最初の一歩ではありません。
自分のしんどさを、なかったことにしない。
そこから始めてもいいのだと思います。