うつの方との関わり方・接し方について
とても多い相談のひとつに「うつの方と、どう接していいかわからない」というものがあります。
「テレビや知人の話などで、うつを患っている人の話は聞いたことはあるが、まさか自分の近しい人がうつを患うなんて思いもしなかった」と、ほぼ同じようにお話しされます。
そのような方々の中には「自分自身、落ち込むことはあるけど、そんなに思い悩むことがないので理解できない」という方もいらっしゃいます(私の知人にもおります)。
確かに誰もが思い悩まずに人生を謳歌できたら、とても素晴らしいと思いますが、現実はそうではありません。
目次
- ○ 「うつ」を理解する
- ・すべてわかってる
- ・否定的な考えしか浮かばない
- ・トイレに行くのも大変
- ・やたら泣けてくる
- ○ 接し方・関わり方
- ・「信用」ではなく「信頼」する
- ・励まさず寄り添う
- ・共感する
- ・こころの風邪ではない
- ・存在していることが素晴らしい
「うつ」を理解する
まず最初に「うつ」とはなにかを理解する必要があります。
しかし、「うつ」といっても様々で、もちろん原因や症状も人それぞれですし、現代医学を持ってしても、根本的なメカニズムは解明されていません。
ですので、その辺りはお医者様にお任せするとして、どのようにつらいのか、どう関わっていったらいいのかを、私の経験を踏まえてお話しいたします。
すべてわかってる
うつで苦しんでいる方を前にした時、あなたはこう思うかも知れません。
「そんなこと考えなきゃいいんじゃん」とか
「考えすぎだってば」とか
「行けばなんとかなるって」とか
「誰もそんな風に思ってないって」とか
「このままじゃ大変だよ?」とか
「この先どうすんの?」とか
「ちょっとやる気出せばいいんだよ」とかとかとか
私の経験から言わせていただくと
「んな事わかってるよ!」となります。
わかっているのに、どうにもならない状態なんだと言うことを理解してください。
否定的な考えしか浮かばない
とにかく否定的に考える天才のような状態ですので、アドバイスなどはいけません。
また、「頑張って」「あなたならできるよ」などの言葉も、「頑張ってもどうにもならない」「できるわけがない」となってしまい、さらには「頑張ることもできないのか」という思考に苛まれ、負のスパイラルへと突入してしまいます。
トイレに行くのも大変
服装や食事、お風呂などは、どうでもよくなります。
そして、トイレに行くことすら大変な時があります。
大変だからといって、漏らしてしまうわけにもいかないので、私の場合は這って行くこともありました。
やたら泣けてくる
どうしてこうなってしまったのか。これからどうなってしまうのか。こんな自分をみんなはどう思っているんだろうか。
こんなことが頭の中で渦を巻いていて、ひたすら自己嫌悪に陥ります。
そして、やたら泣けてきます。
大声をあげて泣くことができれば、少しはスッキリするかも知れませんが、それもできません。
接し方・関わり方
「信用」ではなく「信頼」する
「信用」とは、実績などを評価し判断する行為ですが、「信頼」とは、その人そのものに対する判断です。
過去の出来事や行動などで評価するのではなく、必ず快方へ向かうことを強く信じ、現在のその方を信頼します。
励まさず寄り添う
つらい状態を見てしまうと、どうしても励ましてあげたくなります。
励ますことで少しでも元気になればという善意の言葉がけであっても、時に大きな負担になります。
まずは、しっかりと寄り添ってください。
無理して声をかけなくても構いません。
うつの方はとても繊細で敏感です。
無理をして声をかけようとすると、敏感に感じ取り「無理をさせている」と自分を責めてしまいます。
言葉をかけるよりも、しっかりと寄り添い、安心できる雰囲気をこころがけてください。
共感する
話し始めた時は、無理にあれこれ聴こうとせずに、その方のペースに任せます。
何かをしながらではなくしっかりと耳を傾け、「そうだね、つらいね」「大変だったね」と共感してください。
共感とは、感情を共有することです。
簡単なことではありませんが、つらく苦しい感情を共感することができたら、快方へ向かう足掛かりになるかも知れません。
共感は、それほど大切なことです。
こころの風邪ではない
よく「うつはこころの風邪」なんて言葉を耳にします。
うつに対する偏見や恐怖心を無くすために使っているんでしょうが、私はこころの複雑骨折だと思っています。
「うつ」とは、受け止め切れないほどのストレスの影響により、こころがバラバラになってしまっている状態だと思っています。
客観的・複合的・総合的・論理的・倫理的・社会的・生物的・個人的・本能的・感情的・情緒的・などなどの思考それぞれが、繋がったり組み合わさったりしながら「こころ」を形成し維持しているんだとすれば「うつ」はそれをバラバラにしてしまいます。
バラバラに複雑骨折してしまった「こころ」にリンクできるのは「否定的」な感情だけになってしまい、修復を拒みます。
この状態でまず必要なのは、治療、そして休息です。
間違っても叱咤激励はしないでください。
その方は風邪で苦しんでいるのではなく、複雑骨折で苦しんでいるんですから。
存在していることが素晴らしい
あなたの大切な方が、うつに苦しんでいたらあなた自身も不安になって、苦しいですよね。
しかし「不安」とは、生存していく上で必要不可欠な感情のひとつです。
それを感じられることは生物としての機能が正常だということです。
ですので、漠然と「不安」を恐れるのではなく、大切な方とあなたが、いまここに存在していることを実感してください。
大きな地球の上に確かに存在している。
これほど素晴らしいことは他にありません。