同じことを何度も考えてしまう理由と、少し距離を置く方法
同じことを何度も考えてしまう理由と、少し距離を置く方法を紹介します。反芻思考や不安のループに気づき、事実と想像を分けながら、自分を責めすぎないための小さな工夫をまとめました。
同じことを何度も考えてしまうことがあります。
もう終わったことなのに、何度も思い出してしまう。
考えても答えが出ないのに、頭の中で同じ場面を繰り返してしまう。
「あのとき、こう言えばよかった」
「どうして、あんなことをしてしまったんだろう」
「また同じことになったら、どうしよう」
そんなふうに、考えが止まらなくなることがあります。
これは、心が弱いからではありません。
答えを見つける。
起きたことを整理する。
次は同じ思いをしないようにする。
そうやって、心や体が一生懸命に自分を守ろうとしている反応のひとつなのです。
ただ、考えても結論が変わらず、気持ちだけが苦しくなることもあります。
この記事では、同じ考えが繰り返される理由を知り、考えを無理に消さずに、少し距離を置く方法を見ていきます。
反芻思考には、ちゃんと理由がある
心理学では、つらい出来事や感情について、同じことを繰り返し考え続ける状態を「反芻思考」と呼ぶことがあります。
「反芻」とは、食べ物を何度も噛み返すことです。
心の中でも同じように、過去の出来事や不安を、何度も噛み返すように考えてしまうことがあります。
- 過去の失敗を何度も思い出す
- 相手の言葉の意味を繰り返し考える
- 自分の発言が正しかったか何度も確認する
- まだ起きていない未来の心配を繰り返す
考えること自体は、悪いことではありません。
出来事を振り返ることで、理由がわかったり、次にできることが見つかったりする場合もあります。
問題は、考えることではなく、同じところを回り続けていることに気づけないまま、疲れてしまうことです。
反芻思考への対応に使われるメタ認知療法では、最初に浮かんだ否定的な考えそのものより、その考えを何度も追いかける反応に注目します。
新しい情報や、次にできることが見えているなら、それは必要な振り返りと言えます。
でも、何度考えても同じ結論に戻り、自分を責める言葉だけが増えているなら、それは答えを探しているというより、考えの輪の中を回り続けてしまっている状態です。
考えているつもりでも、自分を責めていることがある
同じことを考えているとき、自分では、きちんと原因を考えているつもりだと感じているはずです。
でも、よく見てみると、解決方法ではなく、自分を責める言葉が繰り返されていることがあります。
「どうして私はこうなんだろう」
「また失敗した」
「自分はいつもだめだ」
「きっと、みんなに嫌われた」
これでは、問題の答えを探すより、同じ痛みに何度も触れ続けることになります。
つらいときには、考えが大きくなったり、極端になったりすることもあります。
「絶対にうまくいかない」
「いつも失敗する」
「誰にもわかってもらえない」
こうした言葉が出てきたときは、そのまま事実だと決める前に、少しだけ立ち止まります。
今、実際に確認できていることなのか。
それとも、疲れや不安の中で浮かんだ考えなのか。
考えと事実は、同じものではありません。
同じ考えから少し距離を置く方法
1.「考えている」と名前をつける
ぐるぐる考えているときは、考えの中に入り込み、その言葉を事実や命令のように感じてしまうことがあります。
そこで、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)で使われる「認知的脱フュージョン」という考え方を取り入れます。
認知的脱フュージョンとは、自分と考えを同じものとして扱わず、頭に浮かんだひとつの考えとして見る方法です。
たとえば、
「嫌われた」
ではなく、
「私は今、嫌われたと考えている」
と言葉にしてみます。
ほかにも、
「また過去の場面を繰り返している」
「心配のループに入っている」
と、今起きていることに短い名前をつけます。
考えを止めるためではありません。
「考えが浮かんでいること」と「本当に起きていること」を分けるためです。
2.事実と予測を分ける
同じことを考え続けていると、実際に起きたことと、頭の中で予測していることが混ざりやすくなります。
たとえば、
「相手から、まだ返信が来ていない」
という事実があったとします。
そこに、
「嫌われたのだ」
「怒っているに違いない」
「もう関係が終わるだろう」
という予測が重なっていくことがあります。
ここでは、認知行動療法の考え方を参考に、紙やメモへ次のように分けて書きます。
- 実際に起きたこと
- 自分が予測していること
- 今、確認できること
- 今はまだわからないこと
- 今できること
事実と予測を分けたら、繰り返している問いも見てみます。
「なぜ、あんなことを言ったんだろう」
「なぜ、自分はいつもこうなんだろう」
理由を考えることが必要な場合もあります。
でも、「なぜ」が自分を責める方向へ続いているなら、問いを変えてみます。
「今、確認できることは何だろう」
「次に同じことが起きたら、何をひとつ変えられるだろう」
「今の自分に必要なことは何だろう」
過去の自分を責める問いから、これからの自分を守る問いへ向きを変えます。
3.体の感覚を使って今に戻る
同じことを考え続けているとき、意識は過去や未来へ向かっています。
そんなときは、マインドフルネスの考え方を取り入れた「グラウンディング」を使ってみます。
マインドフルネスは、今この瞬間の体の感覚や、周りで起きていることへ意識を向ける考え方です。
グラウンディングでは、五感を使って、意識を今いる場所へ戻していきます。
- 足の裏が床に触れている感覚を確かめる
- 無理のない範囲で、ゆっくり息を吐く
- 目に入るものを3つ見つける
- 聞こえている音を3つ探す
- 手に触れているものの感触を確かめる
過去の出来事を忘れるためではありません。
考えの中に入り込みすぎているときに、今の場所と今の自分を確かめるためです。
それでも同じ考えへ戻ってしまうときは、注意の向け先をいったん変える方法もあります。
- 100から3ずつ引く
- 目に入った文字を声に出して読む
- 短い文章を書き写す
- 簡単な片づけをひとつ行う
これは、考えてはいけないと押さえ込むためではありません。
同じ考えだけに向いていた注意を、別の場所へ移すための方法です。
一度離れたあと、必要なら改めて考えても構いません。
考えを止めることが目的ではない
ぐるぐる思考がつらいと、
「考えないようにしなきゃ」
と思うことがあります。
でも、考えを消そうとするほど、消えたかどうかが気になり、かえって意識が向くことがあります。
目指すのは、何も考えない状態ではありません。
同じところを回っていると気づき、必要なら少し離れる。
今すぐ答えが出ないことは、いったん保留にする。
考えが浮かんでいても、すべてをその考えに決めさせない。
不安や迷いは、そっと横に置いておきます。
そのままでも、今の自分が大切にしたいことへ意識を戻すことはできます。
眠る前に考えが止まらないときは
同じことを考える時間は、夜や眠る前に強くなることがあります。
日中の仕事や家事、人とのやり取りが静かになる分、考えごとに気づきやすくなるからです。
そんなときは、布団の中ですべての答えを出そうとしなくていいんです。
紙やメモへ書き出して、
「これは明日の自分が考える」
と決めておきます。
夜の考えごとは、明日の自分へ渡しても構いません。
寝る前に不安が強くなる理由と、少し楽になる過ごし方では、夜になると不安や考えごとが大きく感じられる理由をまとめています。
つらさが続くときは、ひとりで抱え込まない
考えが止まらず、ほとんど眠れない。
仕事や家事、学校などに大きな影響が出ている。
過去の出来事が繰り返し浮かび、強いつらさが続いている。
自分を責める言葉や、気分の落ち込みが続いている。
そのような場合は、この記事だけで原因を決めず、医療機関や相談窓口、信頼できる専門家へ相談してください。
また、自分の安全を保つことが難しいと感じる場合は、身近な人や医療機関、地域の緊急相談先へ早めにつながってください。
必要な支えを借りることも、自分を守るための選択です。
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同じことを考える自分を責めなくていい
同じことを何度も考えてしまうのには、理由があるものです。
納得したい。
次は傷つかないようにしたい。
大切なものを守りたい。
そうして答えを探すうちに、考えの輪から抜けにくくなることがあります。
そんなときは、答えをさらに探す前に、今の状態を見てみます。
考えに名前をつける。
事実と予測を分ける。
体の感覚を使って今に戻る。
必要なら、注意を別のことへ移す。
考えを消す必要はありません。
同じ場所を回っていると気づいたら、考えをそっと横に置き、今の自分が大切にしたいことへ戻ります。
参考資料
- Centre for Clinical Interventions「Worry and Rumination Course」
- Association for Contextual Behavioral Science「Acceptance & Commitment Therapy」
- 厚生労働省「こころの耳 15分でわかる認知行動変容アプローチ1」
- Drost J. et al. “Repetitive negative thinking as a transdiagnostic factor in depression and anxiety: A conceptual replication”
- Clancy F. et al. “The association between worry and rumination with sleep in non-clinical populations: a systematic review and meta-analysis”
この記事は、診断や治療を目的としたものではありません。
同じ考えが繰り返される状態や強い不安、気分の落ち込みが続き、生活に大きな支障が出ている場合は、医療機関や相談窓口、信頼できる専門家へご相談ください。