怒りがおさまらないときに試してみたい方法

私たちはさまざまなことを思い、考えながら行動しています。
その思いや考え、行動などを邪魔されたり否定されたり、あるいはバカにされたりすると、こころが揺さぶられて、やがて「怒り」へと変化し表現されます。
また、自分や家族、仲間などを守るためにも「怒り」が湧き出したりします。
日常生活においての「怒り」は、あまり良い結果を招きません。
できることなら穏やかに過ごしたいものですが、どうすれば「怒り」はおさまるのでしょうか。
怒りは誰にでもある感情です。
だからこそ、大切なのは怒りをなくすことではなく、怒りに振り回されないことなんです。
「怒り」について

「怒り」の感情はとても強く湧き上がってきます。
勢いそのままに表現してしまうと、大きなトラブルへと発展してしまうことも少なくありません。
そんな厄介な感情なら、いっそなくなってしまえばとも思いますが、生存に必要な感情のひとつなので「怒り」の感情そのものをなくすことはできません。
怒りは、自分を守るためにも働きます。
危険を感じた時、不当な扱いを受けた時、大切なものを傷つけられた時、こころや身体は反応します。
ですので「怒ること」そのものが悪いわけではありません。
問題なのは、その怒りの勢いのまま言葉や行動にしてしまって、自分も相手も傷つけてしまうことです。
大切なのは「怒り」に振り回されないことなのですが、そんなことができるのでしょうか。
なぜ人は怒るのか

「怒り」の感情は、実は二次的なもので、その前には「悲しさ」や「切なさ」「虚しさ」や「困惑」などが一次感情として湧き上がり、やがて二次感情である「怒り」へと引き継がれます。
そして私たちは怒りを表現し、あるいは表現できずに自分自身の中に溜め込んでしまったりします。
たとえば、信頼していた人から否定された時。
そこに最初にあるのは「悲しい」ですよね。
自分の気持ちをわかってもらえなかった時。
最初にあるのは「寂しい」や「つらい」かも知れません。
でも、そのままでは傷つきすぎてしまうことがあります。
だからこそ、こころは自分を守るために、より強い感情である「怒り」を表面に出してくることがあります。
近年では多くの企業でも「怒り」をコントロールしてパワーハラスメントをなくそうとする動きが見られます。
そこで用いられているのが「アンガーマネジメント」です。
「怒り」をおさめるために

アンガーマネジメントとは、アンガー(怒り)をマネジメント(管理)することで、「怒り」そのものを消し去るのではなく、怒りを予防したり抑制したりするための心理療法プログラムのひとつです。
アンガーマネジメント・プログラムには認知行動療法や論理情動療法などのテクニックが用いられますが、あまりにも怒りの感情が持つパワーが強いため、短期間で簡単に身につけられるものではありません。
ですのでまずは「怒り」を認識するところから始めましょう。
怒ってはいけないと思う必要はありません。
まず必要なのは「いま私は怒っているんだな」と気づくことです。
それだけでも、怒りに飲み込まれ続ける状態から、ほんの少し距離を取ることができます。
怒りが収まらないときは
「ついカッとなって」などというように、怒りが湧き出すスピードはとても早いものです。
だからといって「怒り」に任せて発言したり行動したりしてしまうと、事態をこじらせてしまいます。
また「怒り」の感情は親しい人、身近な人に対して強く出てしまう傾向がありますので、なかなか関係を修復できない事態にもなりかねません。
そこでまずは「いま私は怒っている」としっかりと認識するところから始めます。
ここで大切なのは、正しさを証明しようとしないことです。
怒っている時は、自分の正しさをすぐに伝えたくなります。
でも、その瞬間の言葉は強くなりやすく、相手にも怒りを生みやすくなります。
まずは伝えるより先に、怒っている自分を認識すること。
それが最初の一歩です。
意識と無意識はウサギとカメ

例えばあなたが信念を持って取り組んでいることがあったとして、それを親しい友人に予期せずバカにされてしまったとします。
その瞬間、あなたの脳内では、友人からの否定的な言葉に反応して一次感情である「悲しみ」が湧き上がってきます。
この時点では、信頼していた友人からのこころない言葉にショックを受け、とても「悲しい」気持ちになっています。
しかしその「悲しい」を味わう暇もなく、自己防衛のために二次感情である「怒り」へと変化してしまいます。
ここで意識的に、そして理性的に状況を分析し判断できれば、口論などのトラブルは回避できますが、意識を司る大脳皮質はとてもスロースターターなので、大脳辺縁系から無意識に湧き上がる「怒り」の感情のスピードについていけません。
辺縁系のまるでウサギのような圧倒的な瞬発力の前に、カメの如き大脳皮質は追いつくまでに数秒かかるといわれています。
この数秒間をどう扱うかがミソになります。
怒りが先に走るのは、ある意味自然なことなんです。
だからこそ「なんでこんなに怒ってしまうんだ」と自分を責めすぎる必要はありません。
問題は、その数秒のあいだに何をするかです。
アンガーマネジメントでは
アンガーマネジメントでは「6秒ルール」や「カウントバック」「ストップシンキング」などがありますが、これはいずれもカメがウサギに追いつくまで、意識が無意識に追いつくまでの時間稼ぎです。
以前のブログで「憂鬱な気分や不安な感情が湧き出してきたら視界に入る文字を片っ端から読みまくる」とお伝えいたしましたが、「怒り」の場合も同じです。
1秒・2秒とカウントしたり、100から3つづつ引き算してみたり、考えること自体を止めたりしながら、感情から一旦離れ、客観的に思考できるようにするんです。
不安のパワーも強烈ですが「怒り」はそれをも上回りますので、根気よくカメ(意識)をアシストする必要があります。
深呼吸をする。
その場を少し離れる。
水を飲む。
視界に入るものを数える。
こうしたことも、すべて時間を稼ぐための方法です。
大切なのは、怒りを一瞬で消そうとすることではなく、怒りに乗っ取られたまま反応しないことなんです。
意識が追いついたら

「怒り」を感じながらも無意識の暴走をやり過ごすことができたら、次の段階へ進みましょう。
次は最初に湧き上がった一次感情に意識を向けます。
友人からのこころない言葉に傷つき「悲しい」気持ちになりました。
そうです、あなたは「怒る」のではなく「悲しい」んです。
この「悲しい」という一次感情を察知して、防衛感情である「怒り」が湧き出してしまうので「悲しい」だけに意識を向けます。
そしてその「悲しい」気持ちを友人に「要望」として伝えます。
決して怒りに任せてぶつけるのではなく、例えば
「私はあなたを大切な友人だと思っている。だからそんなことをいわれると、とても悲しい。なのでどうか見守ってほしい」
等と伝える訳です。
これを「リクエスト」と呼びますが、職場などでも活用できます。
例えば部下が確認を怠り、結果ミスへと繋がってしまった場合、怒りに任せて怒鳴り散らすのではなく、意識の到着を待って一次感情を確認します。
その一次感情が「心配」だった時は「私は心配している」との思いを込めて
「次の案件では確認したことを私に教えてくれませんか?」
と「リクエスト」するんです。
ここで大切なのは、相手を責めることではなく、自分の中にある感情を理解して、そのうえで必要なことを伝えることです。
怒りのままぶつければ、相手は怒りに反応します。
でも、悲しいや心配を伝えれば、相手の受け取り方は変わってきます。
なぜ怒りはおさまらないのか
多くの場合、初対面や目上の方に「怒り」をダイレクトにぶつけることはありません。
それは相手に対して「遠慮」があるからです。
しかし家族や友人、あるいは部下や後輩などには、あまり「遠慮」がありませんので、なにかのきっかけで「怒り」の感情が湧き出し、それをダイレクトにぶつけてしまいます。
そこには「この程度なら怒りをぶつけても大丈夫だろう」「これくらいのことはわかってくれているはず」など、自分の中での基準を元にして判断した「甘え」が存在しています。
この「甘え」のある関係の場合、一度こじれてしまうと修復するのに大変苦労しますので、一次感情に目を向け冷静に判断する必要があります。
また、親しい相手に対しては、期待も大きくなりやすいものです。
「わかってくれるはず」
「察してくれるはず」
「これくらい当然だろう」
そうした思いがあると、それが裏切られた時に怒りはさらに強くなります。
だからこそ、親しい相手ほど、怒りの奥にある一次感情に気づいて、丁寧に伝えることが大切なんです。
まとめ

私たち人間は「群れ」で生存しています。
その「群れ」は家族単位のものや会社、地域、国など規模もさまざまです。
その群れの中で快適に生存していくための大切なもののひとつに「心理的安全性」があります。
「心理的安全性」とは、誰もが気兼ねなく交流できる状態のことですが、いうほど簡単ではありません。
まずは、身近な人との交流の中で、一次感情に目を向ける練習をしましょう。
そしてその一次感情を「怒り」の代わりに伝えましょう。
「怒り」をぶつけられた相手は、当然ですが「怒り」に反応します。
しかし「怒り」ではなく「悲しい」を伝えると相手は「悲しい」に反応します。
これだけでも事態は変化します。
「怒り」は「不安」と同様に厄介な感情ですが、扱い方次第では一歩踏み出す原動力にもなります。
ですので「怒り」と向き合い、上手に付き合っていくことが大切なのです。
怒りを感じることは悪いことではありません。
でも、怒りのままぶつかってしまうと、自分が本当に伝えたかったことまで見失ってしまいます。
だからこそ
「いま私は怒っている」
と認識すること。
少し時間を稼いで、意識が追いつくのを待つこと。
そして、その奥にある一次感情に気づいて、それをリクエストとして伝えること。
それを少しずつ練習していくことで、怒りとの付き合い方は変わっていきます。