『幸せになる勇気』岸見一郎・古賀史健|人と関わる勇気について考えたくて読んだ本
岸見一郎・古賀史健著『幸せになる勇気』を紹介します。アドラー心理学の続編として、人と関わること、自立すること、愛することについて考えるきっかけになる本です。
『幸せになる勇気』岸見一郎・古賀史健
『嫌われる勇気』を読んだあとに、この本を手に取りました。
前作では、人の目や評価に縛られすぎないこと、自分と相手の課題を分けることについて考えさせられました。
でも、そこで終わりではないのだと思います。
人の目から自由になること。
自分の人生を引き受けること。
その先には、やっぱり「人とどう関わるのか」という問いが残ります。
『幸せになる勇気』は、その問いにかなり深く入っていく本です。
タイトルだけ見ると、やさしく背中を押してくれる本のように感じるかもしれません。
でも実際には、かなり強く問いかけてくる本だと思います。
幸せとは何か。
自立とは何か。
人を愛するとはどういうことか。
そして、人と関わる中で、自分はどう生きるのか。
そういう大きな問いを、アドラー心理学の視点から考えていく一冊です。
『嫌われる勇気』の続編として読む本
この本は『嫌われる勇気』の続編です。
前作でアドラー心理学に触れた青年が、3年ぶりに哲人のもとを訪れるところから始まります。
青年は、アドラー心理学を実践しようとして、現実の中で大きく悩みます。
理屈としてはわかる。
でも、実際の人間関係や教育の場ではうまくいかない。
そんな葛藤を抱えて、もう一度哲人に問いをぶつけていきます。
この構成が、私はとても大事だと思いました。
考え方を知ることと、それを生活の中で実践することは違います。
本を読んで「なるほど」と思っても、実際に人と関わる場面になると、怖さや怒りや不安が出てくることがあります。
だからこそ、この本は前作よりも少し難しく感じるかもしれません。
でも、その難しさは「生き方の話」がより現実に近づいているからなのだと思います。
ほめること、叱ること、人を支配しないこと
この本では、教育や人との関わり方について多く語られています。
その中で印象に残るのが、ほめることや叱ることについての話です。
誰かを良い方向へ動かしたい。
相手に変わってほしい。
間違ったことをしているなら正したい。
そう思うことは、日常の中でよくあります。
でも、相手を変えようとする気持ちが強くなりすぎると、知らないうちに相手をコントロールしようとしてしまうことがあります。
もちろん、何も伝えなくていいという意味ではありません。
人と関わる以上、伝えることは必要です。
ただ、相手を自分の思い通りにするために言葉を使っていないか。
自分の安心のために、相手を変えようとしていないか。
この本は、そういう部分をかなり鋭く問いかけてきます。
人に対してやさしくしたいと思っていても、その奥に「こうなってほしい」という支配が混ざることがあります。
そこに気づくのは、少し痛いことでもあります。
自立は、ひとりで生きることではない
この本を読んでいて大事だと思ったのは、自立についての考え方です。
自立というと、誰にも頼らずに生きることのように感じるかもしれません。
弱音を吐かないこと。
人に迷惑をかけないこと。
全部自分で何とかすること。
そんなイメージを持つ人もいると思います。
でも、この本で考えさせられる自立は、もう少し違います。
誰かの評価に自分の価値を預けすぎないこと。
相手の期待に合わせることだけで、自分の生き方を決めないこと。
そして、人との関係を切り離すのではなく、関わる中で自分の人生を引き受けていくこと。
それが、この本の中で大切にされている視点なのだと思います。
人に頼らないことが自立なのではなく、人と関わりながら、自分の選択を手放さないこと。
そう考えると、自立は冷たいものではなく、むしろ人と関わるために必要な土台なのかもしれません。
「愛」の話が、少し難しい
『幸せになる勇気』では、愛についても語られます。
ここは、読む人によってかなり受け取り方が分かれるところだと思います。
やさしい恋愛論や、心が温まる話を期待して読むと、少し戸惑うかもしれません。
この本で語られる愛は、感情だけの話ではありません。
相手とどう向き合うのか。
相手を所有しようとしていないか。
自分の不安を埋めるために、相手を求めていないか。
そういう、かなり深いところまで問いかけてきます。
だから、弱っているときに読むと少し重く感じる部分もあると思います。
でも、人との関係の中で何度も同じ苦しさを感じている人には、大事な問いをくれる本でもあります。
愛されることだけでなく、愛すること。
わかってもらうことだけでなく、相手を見ること。
その視点は、簡単ではないけれど、人との関係を少し深く見直すきっかけになります。
この本が合いそうな人
- 『嫌われる勇気』を読んで、さらに深く考えたい人
- 人との関わり方に悩んでいる人
- 相手を変えようとして疲れてしまう人
- 自立や依存について考えたい人
- 愛すること、信頼することについて少し立ち止まりたい人
読むときに気をつけたいこと
この本は、前作よりも少し重く感じるかもしれません。
テーマが、教育、自立、愛、人との関係に深く入っていくからです。
読んでいて、納得できる部分もあれば、反発したくなる部分もあると思います。
それでいいと思います。
すぐに全部を受け入れなくて大丈夫です。
今の自分に必要なところだけ拾う。
引っかかるところは、いったん置いておく。
少し時間を置いてから読み返す。
この本は、そういう読み方が合う本だと思います。
また、この本は医療的な診断や治療の代わりになるものではありません。
人間関係の苦しさや不安、落ち込みが強く、生活に大きな影響が出ている場合は、医療機関や専門機関へ相談することも大切です。
Take a stepとしての感想
この本の良さは「人と関わること」から逃げずに考えさせてくれるところにあると思います。
人の目が気になる。
相手にどう思われるかが怖い。
嫌われたくなくて、自分を後回しにしてしまう。
そういう苦しさから自由になりたいとき、まず必要なのは、自分と相手を分けることなのかもしれません。
でも、その先には、人とどう関わるのかという問いが残ります。
『幸せになる勇気』は、その先の問いに向き合う本です。
やさしいだけの本ではありません。
少し厳しく感じるところもあります。
でも、自分の人生を誰かに預けすぎず、それでも人と関わっていくために、大切な視点をくれる一冊だと思います。
人との関係に疲れたとき。
相手を変えようとして苦しくなっているとき。
愛することや信頼することについて、少し立ち止まりたいとき。
そんなときに、ゆっくり読んでみてもいい本です。